アカデミックと言われるシンガポール。ではローカルスクールの教育はどのようなものなのか?。ローカル保育園の様子をaikomochiさんに教えてもらいました。
(コロナ前のため現在の様子とは異なる点がある事をご了承ください)
娘が1歳半から、系列でもない公団住宅の下にあるようなどローカル保育園に通っています。
1歳半から年長さんまで約30人程度の小さな園。朝の7時から夜の7時まで預かってくれます。
預ける前は、のびのび楽しく遊べたらよいぐらいに思っていましたが、通わせてみると想定していたよりも「お勉強(do work)」の時間が結構あるようです。
モンテッソーリ教育などの幼児教育に力を入れている幼稚園やプリスクールからすればレベルはおそらく低いのでしょうが、今回は、“どローカル保育園”でも得られる教育体験のレベルについてご紹介します。
また、お勉強につきものの成績評価について。先生たちの寛容な姿勢から学んだ「3歳児の勉強の本質」についても後半触れたいと思います。
1日のプログラムの半分は学習プログラム
まずは、保育園の1日のおおまかなプログラムをご覧ください。
〜9:00 | 登園 |
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〜10:00 | 英語学習 ※水曜日だけは算数 |
〜11:00 | 中国語学習 |
〜13:00 | シャワー、昼食 |
〜15:00 | 昼寝、おやつ |
〜17:00 | 英語の絵本、中国語の絵本の読み聞かせ |
このように、午前と午後に分けて語学や算数を勉強する時間があります。
ABCの読み書き、数字のカウントは2、3歳からスタート
学習プログラムは、3歳になるころから始まります。こちらでは、Nursery1(N1)という学年。
なお、こちらの学年の呼び方ですが、
2ー3歳が、Nursery 1(N1)、
3ー4歳が、Nursery2(N2)、
4ー5歳がKinder1(K1)、
5ー6歳が、Kinder2(K2)です。
K1、K2にもなると宿題が出始めたりと、教育への負荷が多くなってきます。
N1の学年では、次の学習プログラムがありました。
語学
アルファベットを読むための練習や単語の練習。単語は、「色」「動物」「乗り物」「身体」など、各月後にテーマを持って単語を覚えます。
英語だけではなく、中国語の学習もあります。同様に、動物や色などの簡単な単語の発音を練習します。
英語や中国語も歌を使って覚えることが多いようです。
なお、英語学習しなが「モラル、道徳」を学ぶこともあるようです。おもちゃを大事にするとか、片付けるとか。
算数
数の数え方を覚えます。数の概念も合わせて学習。
1から10くらいまでの数が数えられるように、英語と中国語で勉強します。
また、論理的な考え方も学びます。比較(例:大きいと小さい)とか、カテゴライズ(例:農園にいる動物)など。
モータースキル(手先の器用さ)&アート
モータースキルといって手足の器用さを(例:豆をつまんで皿に移す)など、いわゆる細かな作業をするための、忍耐力や要領を鍛えるプログラムやもあります。
また、輪切りのレモンで自由にアートを作ったり、綿棒でスケルトンを作ったり。アートを創造するようなものもあります。
身体能力
運動能力を鍛えるプログラムもあります。いわゆる、日本で言うところの体育に近いもの。
ジグザグで歩けるか、その場でジャンプできるか、スキップができるか、など公団住宅の広場で練習。
こうして、一応、頭脳、身体、技術、美術のバランスを取ったプログラムが行われていることになっています。
なので、娘がN1を修了するころには、ABCは読めるようになりました。雨降りかあさんの中国語版も歌えるようになりました。
思ったよりも結構がっつり勉強しているな、と思いました。
進学するほど、プログラムが強化される。3ヶ月ごとに評価も開示。まさに、教育熱心なお国柄?!
N2に進学すると、語学に関してはフォニックスという正しい発音をするための練習が始まったり、書くことにも注力していきます。
算数も、20以上数えられるようになったり。倍数の概念など複雑な算数(もしかしたら数学?)を勉強するようにも。
学年があがるごとに、それぞれのプログラムで求められるレベルがぐんと上がります。
さらに、K2のおにいさん、おねえさんたちは、中国語が特にペラペラで簡単な単語はかけるレベルに。つまり、漢字が書ける。
小学校の入学してすぐの期末に中国語の試験が控えています。少しでも、アドバンテイジとなるよう園長先生が力を入れています。
どローカル保育園でこのレベルなので、教育に力を入れていたり、系列のように教員の余力があるところはもっとレベルが高いと思います。
やはり、シンガポール。
小学校進学してすぐに試験があるなど、子どもにとっては大変な環境なので、保育園であってもこの程度の勉強が必要なのかもしれません。
また、3ヶ月に一度親と先生との間で3者面談が行われ、学習の進捗や成績について説明を受けます。「よくできました、できました、がんばろう」の3段階くらいで成績もつきます。
こうして、「保育園」であってもわりと「教育」に力をいれているところがあるのがシンガポール流。
まったく、教育に興味がなかったわたしも、急に教育アプリを試してみたり、ABC表を毎日読ませたりと、お勉強させたほうがいいのかなという気持ちが強くなった時もありました。
いつのまにか、巻き込まれて、「昭和の教育ママ」にならないか一瞬自分が怖くなりました。が、そこはローカル保育園。
先生たちが、うまい具合に肩の力がぬけているので、どっぷりはまることはなくてすみました。
「まだ」できないだけ、できるようになる。できるようになるまで頑張れではない。
3ヶ月ごとに行われる保護者面談。
学期の振り返りと成績の共有が行われます。
いわずもがな、親としては結構緊張していくのですが、先生たちは、意外にもリラックスしています。
態度が悪いこととか、注意を受けたりもしますし、はっきりズバズバと言われることが多いです。
さて、本題の成績。
娘は、英語がそこまで得意ではないので、改善が必要な項目が奥手、正直目につきました。
思わず先生に、このままで大丈夫でしょうかと聞くと、こんな回答が。
「まだ、できないだけ。できるようになるから心配しないで。」
“まだ”なだけ。できるようになるのを待ちましょうという姿勢。
たしかに、たった、3歳の子どもに、時間を焦ってもしょうがいない。
できないことをどうにかしてでも、できるように頑張れとは言わない先生たち。懐の深さなのか、おおらかさなのか。
わたしは何を焦っていたのか。
むしろ、結果を求めるのではなく、こうして楽しく学ぶという習慣がつくことのほうが、長期的にはよさそう。
じっくり、子どもを焦らせず、「待つ」ことがとても大事。
わたしは、子どもを信じてあげられていないことに気づかされました。
誰々はできるのに、あなたはできないの!?なんて比較をして、わずか3歳児にレッテルを貼ってしまうところでした。
シンガポールの保育園の先生たちは、自然と子どもたちを信用して「できなくても」焦らない。
子どもをできないと決めつけて対応しない。
思いかけず、ローカル保育園で教育を一生懸命にやってもらえ、さらには、わたしも、子どもを信用する辛抱強さも教えてもらってしまいました。
※本記事は2019年時点の体験で、一個人の体験談となります。コロナ以前のため現在とは異なる点がある事をご了承ください。